キュイのブドウ畑
ボランジェのシャルドネ発祥の地、キュイ
コート・デ・ブラン地区の北部、プルミエ・クリュに格付けをされているキュイの村では、シャンパーニュ・ボランジェの歴史的なブドウ畑が広がります。1801年にアタナス・ド・ヴィレルモンが受け継いだ当初は急斜面の数ヘクタールの土地でしたが、ボランジェはこの土地を中心にシャルドネのブドウ畑を築き上げました。
現在、18ヘクタールにおよぶキュイのブドウ畑は、シャルドネが植えられた多様な斜面が特徴です。シャルドネはエレガントで活き活きとした味わいの白ブドウですが、特にシャンパーニュ・ボランジェにとっては特別な存在です。というのも、白ブドウはブレンドに欠かせないものの、ボランジェの生産量の60%はピノ・ノワールであるため少数派です。キュイのブドウ畑から造られるワインは、ボランジェのキュヴェにミネラル感と活き活きとした印象を添え、フローラルかつエキゾチックな、そして柑橘系のアロマを加えます。
シャンパーニュ・ボランジェの他の6つのブドウ畑と同様に、キュイも物語の宝庫です。1960年代まで、ブドウ畑の上に位置する森で育ったオークの木がボランジェの樽をつくるために使われていましたし、ラ・シュニュー区画はかつて菜園で、その収穫物は養老院に寄付されていました。現在、ラ・シュニューはブドウの木が植えられています。また、ブルグとラ・ゲット区画には50年以上の樹齢を持つシャルドネのブドウの木が植えられ、少量ですが素晴らしいアロマを持つ果実が収穫できます。
2011年に、シャンパーニュ地方ではすでに栽培されなくなっていた成長の遅い古代の白ブドウ品種、プティ・メリエが、キュイに再び植えられました。これはまさに新たな宝の誕生です。ブドウを味わえるようになるまで2年、そしてそのブドウから造られたワインを味わえるようになるまで、さらに数年が必要でした。キュイのブドウ畑の管理者であるジル・シオセック(Gilles Ciosek)は、忍耐強い人物です。彼は、ブドウの樹にはいつも通り、多くの労力と丁寧な手入れ、そして時間が必要であることをよく理解しているのです。